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05) 食卓の温度
2007-02-20 Tue 15:40
GBr
04) 太陽の恩恵 からの続きです





親を親として見なくなったのは いつの頃だろうか

抑えつけられれば られるほど

強固な意志は牙となり 研ぎ澄まされていく

その牙は いつか咬む日を夢に見て

少しずつ 着実に 大きくなっていく






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夏休みのある日 夕方の食卓で父親と三人で食事をした
野球中継を見ながら 俺の目も見ずに父親が言った

「お前は どこをほっつき歩いとんか!?」

声が怒っている

こういう時は きっと殴られるのだと俺は自覚をしていた

「先輩ん家に泊まっとる」

女性は黙って やりとりを聞いている

「家に何か 不満でもあるんか!?」

不満? 不満だらけだ! 

何が? 言葉が捜せない!

「・・・別にない  ごちそうさま」

話したくない
これ以上話すと この女性を傷つけてしまう

「浩史っ! ここに来いっ!!」

父親はテーブルをバンッと思い切り叩き
席に戻って座るよう大きな声を荒らげた

「先輩の家に泊まるのは構わん お前の好きにせぇ
 その代わり 泊まる時にはお母さんに一言断ってからにせぇ」

目の前の女性は目線を落とし
食べ物を入れた口をボソボソと動かしている

テレビの中では 誰かがホームランを打ったのか
実況の声が異常に盛り上がっていて その声さえもが憎らしいと感じる
相撲と野球がテレビに映るのは 父親が家に居る時だけだ
野球に何の興味もない
だが 重々しい空気の中 ランナーがホームインをする姿を
俺はじっと見ていた

「浩史っ 返事をせんかっ!」

涙が溢れて来る
悔しくて 悔しくて 涙が溢れ出してくる
こんな奴の世話になってる事が
子供でチカラのない俺の無力さを思い知らされ
悔しくて 悔しくて
あとから あとから 涙が こぼれる

「お母さんは 2人も要らん!!」

声を絞り出して言ったあと 嫌というほど殴られた

女性の前で 木製ハンガーで死ぬほど殴られた
母親なら直ぐに止めに入ってくれるが
この女 全く素知らぬ振り

手で殴られ ハンガーで殴られ 顔をぶたれ 腹を蹴られる

30分以上殴られ続け 部屋に閉じ込められ
俺は布団で丸くなる

頭から被ったタオルケットの中で
親を選べない 子の不幸を 歯軋りしながら 呪い続けた

白いシーツに  涙と血が滲む

前に流した血の跡を 上書きするように
 














「浩史くん 清水さんから電話よ」

全身の打撲で体中が痛い
泣き通したせいで目も腫れている

「はい もしもし」
「ヒロ? 今日集合するから 来んか?」



「どうしたん!?」

ゲーセンで清水達が集(たか)って聞いてくる
顔を腫らしていては誤魔化し切れない

「クソ親父に(笑)」

珍しくも何ともない アイツ(父親)はキレると直ぐに俺を殴る
俺が泣くと 更に手数は増える
アイツはクソだ クソッ

・・にしても 昨日は激しかった
俺があの女を傷つけたからだ
傷つける気はなかったが アイツが俺にそれを言わせたのだ
久々に家に帰って来たかと思うと 何かに理由をつけ俺を殴る
アイツが帰って来ることを 俺が歓迎していないから
俺に苛立ちを覚えているのだ
アイツはクソだ クソッ

「ヒロの父ちゃん おっかねぇんか?」
「まぁなっ(笑)」

「家出ろよっ」
「家出て どこに行け言うん?」

「俺ん家来いよ」
「!?」






清水は本気で言ってくれていた

酒とギャンブルに狂っていたろくでなしの父親が
母親を殴る蹴る姿をガキの頃から見ていた清水の家から
柔道を習ってる一番上の兄貴が追い出したことを話してくれた

俺の父親の暴力を他人事として捉えられなかったのだ
母親に俺の話を真剣にしてくれると言ってくれた

その夜 俺は家には帰らず清水の家に泊まった
清水の母親は俺を歓迎してくれて料理を振舞ってくれた
直ぐ上の兄貴と一番上の兄貴も帰宅して
清水家4人と俺とで楽しい食卓を囲む

決して裕福ではないように見える清水の家は
何ともいえない温もりが溢れていた
俺は父親の居ない一家団欒をとても羨ましく感じた

「安達君 うちの子が自転車盗まないように見張っててね」

清水の自転車盗難の件だ

「盗んでねぇ 借りただけや」
「母親にその口は何や!!」

言い訳をした清水の口の使い方に 一番上の兄貴が大声で叱る
父親を追い出したという兄貴だろう この家の立派な父親に見える

「盗むくらいならバイトでもして 自分で買え」

真ん中の兄貴も話しに加担して アルバイトをしろという話題になり
翌朝 俺と清水は真ん中の兄貴に付いて新聞配達へと出かけた




空が新しく 風景が青く輝いて見える道を
清水の兄貴の原付バイクと俺と清水の二台の自転車が走った

清水が乗る配達用のでかい自転車のブレーキ音が
静かな朝の町に キィーキィーと響く度に
顔を見合わせ 笑い合った

二時間は過ぎただろうか ようやく全ての新聞を配達し終え
営業所で貰ったヤクルトを飲みながら
すっかり明るくなった道を 清水を後ろに乗せ
家に向かってペダルを漕ぐ
  
新しい事を始めた事で 妙に清清しい気分だった

炊事場から光の漏れる家に戻ると
清水が自転車から飛び降り 勝手口から家に入って行った

清水 家に入るのを あんなに嬉しそうにして

自転車を停め 換気扇から出てくる焼き魚の煙と
炊事場からトントントントンと聞こえてくる包丁の音に
寄り添っていると
勝手口のドアが開き 清水のお母さんが顔を出した

「ヒロ君お帰りぃ ご苦労さんね早よっお家に入りなさい」

お母さんの温かい言葉で俺は泣きそうになる

豆腐のお味噌汁に目玉焼き アジの開きにキュウリの糠漬け
テーブルに並んだ5つのお茶碗
一番上の兄貴も起きてきて 5人が膝を並べる朝の食卓

「ヒロ君は ここの家の子になっていいんよ
 息子が三人も居るんやから もう一人くらい増えたって一緒ん事やからね
 さっ遠慮する子は嫌いやからね 遠慮せんとい~っぱい食べてよ」

他人の母親の愛情に満たされて ポロポロ涙がこぼれ出す
我慢しようとすればするほど あとからあとから涙が湧き出てくる
しょっぱくなった白いご飯をかきこんだ
背中をポンポンと叩く清水の手が 涙を更に助長させた

母親はティッシュをとってくれ

「そんな泣いたら ヒロ君の魚にはお醤油はいらんねぇ
 もう塩っ気がじゅうぶんやもんねぇ」

1人泣く俺と4人の笑う声の食卓には
俺が欲しかったものが たくさん詰まっていた












「安達 大丈夫なんか?」

10時から部活の練習があった
顔の腫れがひくまで 休んだらどうかと言われたが
ようやく 部活を楽しいと思えるようになってきていたし
何よりも 休む事で中塚さんをガッカリさせたくなかった

今夜も帰って来なさいよと言ってくれるお母さんにお礼を言って
清水を連れて部活の練習に出た

清水と一緒に新聞配達をすることになった俺は
清水にもバレー部に入るよう誘ったのだった

清水を待たせ体操着を取りに自分の家に戻る
エレベーターや廊下 鉄扉のドアも玄関も冷たく感じた
父親の靴がない事を確認し 家に上がる
夜の仕事をやってる女は寝室でまだ寝ている
テーブルの上にはラップのかけられたおかずが
レンジでチンをされるのを待っていた

部屋のドアを開けると 俺の持ってたマンガ本が全て処分されていた
机の上には 女が書いた手紙があった


::::浩史くんへ
::::毎日一度は家に帰って顔を見せてください
::::友達の家に泊まる時は 誰の家に泊まるのかだけでも教えてください
::::お父さんには外泊することを 私に断ったというようにしなさい


手紙に気付かない振りをして 俺は体操着を持って部屋を後にした

「おぉ 安達ぃ 男っぷりが上がったのぉ」

茶化されるとは思っていた
服を着替える俺に心配そうに聞いてくるのは
同学年の2人だけだった

「どした 顔? ケンカでもしたん?」

ケンカなら箔もつく 父親だと言うのもバツが悪い
いずればれるだろうが 自転車で転んだことにした

緊張してる清水を連れて体育館へ向かい
バスケをやっていた中塚さんに
清水の入部の許可を貰う

「清水と言います よろしくお願いします」 

深々と頭を下げる清水を横目に
中塚さんは俺の腫れた顔を怪訝そうに見て
清水にヤられたのか?と目で聞いてきた
俺は即座に小さく首を横に振った

清水が入部し この日10人集まったことで
バスケットボールを一日楽しんだ

入部初日だった清水は この日バレーボールには一度も触れなかった

着替えの部室で清水に聞かれた

「今日も 家来るだろ?」

行きたいのは行きたい 
が 本当に清水の家の子になれるとは 流石に俺も思っていない
部屋にあった手紙の一行が頭に引っ掛かっていた

::::毎日一度は家に帰って顔を見せてください

「ありがとう 今日は 一度帰るよ」

「そっか じゃぁ明日の新聞配達でな」
「うん お母さんによろしく言っておいてな」

「安達 (部に)誘ってくれてありがとうな」
「別に 家までチャリで送って行こうか?」

「中塚さんと 帰るんだろ? いいよ歩いて帰るから」
「そか 分った じゃあ また明日な」

清水は気を利かせて 先に帰った

チャリでの帰り 橋の欄干に足をかけタバコに火を点け中塚さんが
俺の顔が腫れてる理由を聞いてきた

父親に殴られた経緯(いきさつ)までは話さなかったが
新しい女性を 母親として認めたくない気持ちを打ち明けた

「お前も色々あるんやなぁ まっ何かあったら俺んとこ来いよ」

中塚さんはどこまでも心強い
清水といい 中塚さんといい 俺は友情に感謝した

中一の無力な俺の心の支えになってくれた

父親や兄貴を俺が自由に決めていいのなら
間違いなく 中塚さんを兄に選ばせて貰う
俺は中塚さんのように強く そして優しくなりたかった






夕方になると女は美容室に行き そのままクラブへ出勤する
父親は滅多に家に帰って来ない
いつものように一人静かに食事を摂る
いただきますもご馳走様も口にすることなく
生きていくためだけの食事を摂る

夜も更けてくると表に出て

人が歩いてるのを見て

車が行き交うのを見て

俺は安心する



世界で俺が独りぼっちでないことを確認して


部屋で独り 布団で丸くなる


寂しさを紛らす数百冊のマンガ本は もぉ部屋には無い


ラジオを枕元におき パーソナリティの声を聞きながら


今日も独り 目を閉じる



清水のところに





中塚さんのところに








飛んで行きたい衝動を抱き締めて







独り 布団で 丸くなる





















【 06) 青天の霹靂 】 へ続く


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この記事のコメント
食卓の温度 ~後記~
光は人を寄せ付ける
火もまた同じこと

光を見ると気持ちが安らぐ
火を見ると心が安らぐ
 
きっとそのどちらも熱を放つからだろう


火の絶えない家庭はいい
そこに 炊事をする母親の姿を感じる事ができるから

離婚をした父親に引き取られ新居に行くと
そこには見知らぬ女性が居て
俺はその女性をお母さんと呼べずにいた

今考えると 何故父親が俺を連れて出たのだろうか?
俺は父ちゃん子ではなかったのに
父に愛されてると感じたこともない
なのに何故?

その事を今でも時々考える
だが 質問は一生するつもりはない

何故なら
思い出したくないのと 思い出させたくないのと
の理由からだ

今更知ってどうなる?
今更過去をほじくって何になる?

当時の大人の事情というやつだろう







友情とか愛情はいつもココロにあって
それらを提供されたり 提供したり
いつでも直ぐにできる人間で在りたいと願う

その為には自分が強くならなくてはならない
優しくなくてはならない

生きるということは それ自体が大変なこと

だからこそ 世の親は子供の事を
元気で生きてさえ居てくれればと願っている

生きるということの大変さをよく知っている人だからだ

親に死に顔を見せる親不幸者だけには
なりたくはない

生きる理由はそれだけでも十分だ

※ここで言ってる親とは 母親のことを指しています
 決して父親ではありません。


G@TEN
2007-02-20 Tue 16:00 | URL | G@TEN #qNXjQhIg[ 内容変更]
食卓に温度はない
ひろ、同じだね~。同じ。

私も家ん中で挨拶なんてした事ないよ。

てか、友達んちに泊まりに行って、
家族で「いただきます」とか「おやすみ」って言ってるのが不思議に映った。

生きるため、息するために毎日冷たいご飯食べた。

「お母さん」って呼ぶ人じゃなくて
「お母さん」って思える人が欲しかったです。
んで、私も「お母さん」になりたかったです。

抱き締める衝動もなかったなぁ・・。
今はあるよっ!
あるけど、幻なの・・(^‐^;)

ひろ、痛かったね。
2007-02-20 Tue 16:31 | URL | 風太 #SFo5/nok[ 内容変更]
「行ってきます」っと言った場所が
同時に帰ってくる場所を意味する・・・。

少し異なるのかもしれませんが、
このような言葉を過去
残されていたことがありましたよね。

ふと思い出しました。

僕自身は、G@TENさんではないので
本当のG@TENさんの思いは
分からないのかもしれませんが、
理解したい。
傲慢で勝手な感情かもしれませんが
そう思ってしまいました。

上手く言葉に出来ない。
もどかしさに今包まれています。
2007-02-20 Tue 22:26 | URL | カズ #-[ 内容変更]
忘れたいのに忘れられない記憶がある。

時々思い出して、ゆらゆらとひたっていたい記憶もある。

記憶がなくなったら、きっと私じゃなくなる。
わかっているけど、
全部忘れてしまいたいことが・・・ある。

せめて私は、
G@TEN さんとの、
このこころの間隔のまま、、
ずっとあり続けます。
(飛ばされない限りね)
2007-02-21 Wed 01:37 | URL | バシ #-[ 内容変更]
レス×6
To.風太さん

自分の育った環境は 今となってはもう過去
前を見て 未来に向かって・・・

と言いたい所だけど
過去の積み重ねで今があるのだから

理屈た言葉では何とでも言えるけど
本当 苦しいですね

そこで 過去も手放さず抱きしめて
3年後をイメージして生きていく事に
しましょうよ

G@TEN

~~~~~~~~~~~~~~
To.カズさん

>「行ってきます」っと言った場所が
>同時に帰ってくる場所を意味する・・・。

ですね 確かに書きました
よく ご記憶ですね

日常の当たり前の裏には
色々な意味が含まれていて
忘れがちですが
それに気付き 忘れないことで
ココロを常に高潔に保っていきたいですね

1人では出来ないことも
同志とでは出来ると信じています
週に一度でも ココロの洗濯
一緒にしていきましょうね^^

それぞれの違った環境の中で
こうして繋がったこと 嬉しく感じています。

G@TEN
~~~~~~~~~~~~~~
To.バシさん

交信を始めて ずいぶんと経ちましたね
色々な顔を見られておりますが
不思議と他人のような気はしません
ネットというあやふやな環境下で
こうして繋がっていることが
今の俺の財産でもあります

>(飛ばされない限りね)
この一行が気になりましたがw

私が飛ばすのですか?
バシさんを!?

まさかw

凧糸をワイヤーに変えますね^^

G@TEN
~~~~~~~~~~~~~~
↑ブラインドコメントさん


実名を出すことによって 万が一 その方達に
迷惑がかかってしまう事があってはいけない
絶対に避けなくてはいけない
その考えで 人名や店名の実名は出していないのです
本作品に出てくる名前は本名ではありません
ご安心ください
ご心配くださってどうもありがとうございますm(__)m

G@TEN

~~~~~~~~~~~~~~
↑ブラインドコメントさん

>今まで全て読ませて頂いてます。

どうもありがとうございますm(__)m
皆さんの寄せてくれるコメントに
励まされています
本当にありがとうございます

G@TEN

~~~~~~~~~~~~~~
To.spykさん

コメントが削除されていたのでレスを迷いましたが
書かせてください

>また暴走しそうです。

暴走することを 反省するには早い気がします
なぜなら 迷惑と思っていないからです

>月の無い空には 狼も吠える気がしない
>明かりが欲しい

spykさんのその表現 好きです

言葉に重量を感じているからです

消去することなく
是非 またコメントくださいね
お待ちしております

G@TEN
2007-02-22 Thu 18:40 | URL | G@TEN #qNXjQhIg[ 内容変更]
G@TENさん。
すでに読まれてたんですね。惑わせてごめんなさい。
書いた後で内容が気に入らなくなったので消してしまいました。
そして、その内容についても失礼しました。ごめんなさい。
謝りたかったので謝りました。心当たりが無ければ忘れてください。


今のG@TENさんの夜空
星がいくつも見守っていますね
みんな あったかく光ってて

きれいですね
2007-02-23 Fri 01:49 | URL | spyk #FBdDnGNc[ 内容変更]
To.spykさん
spykさん

良かった(笑)
叱られるかと思いました

前作から読んでいただいてるんですよね
どうもありがとうございます

間もなく前作へと繋がっていきますから
気長に待っていてください

いつも ありがとうございます

G@TEN


2007-02-24 Sat 11:44 | URL | G@TEN #qNXjQhIg[ 内容変更]
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